口腔がん検診

お口の中にも「がん」ができることを知っていますか?
私は大学病院で口腔がんの治療(手術、化学療法、放射線療法など)に携わっておりましたが、「ただの口内炎だと思っていた」、「痛みがないので放っておいた」などにより発見が遅れてしまい、手遅れとなり命を落とすこととなったり、命が助かったとしても話をしたり、食べたり飲んだりといった口腔の機能に大きな障害が残ってしまう方が多く、非常に残念に感じていました。

しかし、口腔がんは早期発見・治療ができれば、障害を最小限におさえ社会復帰を果たすことも可能です。そのためには、定期的に歯科医師による口腔管理を受けることが重要です。

当院が行うがん検診は、患者さんのお口の中を歯科医師(口腔外科専門医)が隅々までチェックすることにより、ご自身では確認することが難しい病変等を見つけることが可能です。

口腔がんはタバコやアルコール、未治療の虫歯や合わない入れ歯などによる慢性的な刺激が発生の要因となると言われています。そのため、定期的に歯科医院を受診しその要因を発見し取り除くことが口腔がん予防には重要です。また、定期的に検査をし、わずかな変化を見逃さないことで、口腔がんの早期発見と治療につなげます。

口腔がん検診の内容

口腔がんの早期発見や、がんになる前の状態の粘膜疾患などを早期発見し治療するために、お口の中を検査します。

  • お口の中の粘膜や歯ぐきなどに異常がないか
  • あごの下や首のリンパ節に腫れや痛みがないか

を確認します。(所要時間:30分程度)

異常が発見された場合は二次医療機関に紹介し精密検査を依頼します。

智歯(親知らず)の抜歯

親知らずの抜歯は口腔外科外来での手術の中で最も頻繁に行われているものです。
現代人はあごが小さいため、親知らずがまっすぐ生えてこられず、炎症や虫歯の原因となってしまい抜歯が必要となる場合が多くあります。

あごの構造は複雑なため、下あごの場合は下歯槽神経、上あごの場合は上顎洞との位置関係などを必要に応じレントゲンだけではなくCTで確認し、正確な診断下に安全に行うよう心がけています。

埋伏位置や持病などにより全身管理が必要な患者さんは二次医療機関に紹介させていただくこともあります。

1.顎関節症

顎関節症は、「あごが痛む」「口が大きく開けられない」「口を開け閉めするとあごがカクカク、ジャリジャリ音がする」などのほか、頭痛や肩こり、耳鳴りなどを引き起こすこともあります。

原因は、ストレスや歯ぎしり、食いしばりなどにより顎関節に外傷性の強い力が慢性的に加わると発症すると言われています。かみ合わせが悪かったり、抜けたまま放置している歯などがあると、さらに悪くなることがあります。

また、歯周病は細菌感染が主な原因ですが、早期接触などのかみ合わせの異常は顎関節症だけでなく歯周病を悪化させる原因にもなります。

顎関節症と歯周病は、関係していることが多くありますので、当院では、あごの状態だけでなく、かみ合わせや歯周病の評価も行い、総合的に診断、治療していきます。

治療は症状や原因に応じて、薬物療法、理学療法、スプリント療法などを行います。場合によってはいくつかの治療を組み合わせることもあります。

スプリントの効果がでにくい食いしばりなどに対しては、咬筋や側頭筋に対してボツリヌストキシンによる治療(保険適応外)が効果的な場合もあります。

2.歯根のう胞

虫歯が進行し歯の神経に感染がおこると、根の先にのう胞という袋状の病変ができることがあります。

歯ぐきが腫れたり、かんだ時に痛みが出たりすることで発見されることが多いですが、無症状のまま偶然レントゲン撮影や定期検診で発見されることもあります。

歯の根や骨の状態によっては抜歯が必要となる場合もありますが、根管治療(歯の根の治療)や口腔外科手術であるのう胞摘出術、歯根端切除術を行い、なるべく抜歯せずに歯の保存を図ります。

3.歯性感染症

むし歯や歯周病、親知らず周囲の炎症が進行してしまうと、さらに感染が歯の根や歯ぐきから歯槽骨に広がり、あごの骨にまで及ぶことで、歯ぐきの腫れと痛みだけではなく頬やあごの腫れを伴うことがあります。

治療は原因になった歯や歯ぐきの治療(歯の根の治療や抜歯など)、や膿がたまっている場合は、切開して膿を排出します。

歯性感染症は進行すると呼吸困難や敗血症などにより命にかかわることもある怖い病気です。

点滴での抗菌薬投与が必要な場合や入院下での全身管理、全身麻酔下での手術が必要となりそうな患者さんは速やかに二次医療機関に紹介します。

4.歯の外傷

歯の破折:歯の根まで破折している場合は抜歯しなくてはならない可能性がありますが、歯冠のみの破折であれば歯の根の治療やかぶせ物の治療を行うことで保存を図ります。

歯の脱臼:歯が完全に抜けてしまったり(脱臼)、抜けかかってしまった(亜脱臼)状態です。元の位置に歯を戻して固定し回復を待ちます。一度脱臼してしまっても歯や歯槽骨の状態が良ければ元の位置に戻して固定することで治療できる可能性がありますので、できるだけ早く受診することが重要です。

5.睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に呼吸が10秒以上停止する状態のことを睡眠時無呼吸といいます。

1時間あたり5回以上無呼吸や低呼吸が発生し、そのために深い睡眠をとることができず、日中などに強烈な眠気や体のだるさがある状態のことを睡眠時無呼吸症候群といいます。

歯科で行うことのできる治療は、主に軽症の閉塞型睡眠時無呼吸症候群の患者さんに行われる、睡眠時の上気道確保を目的としたマウスピース治療です。

内科や耳鼻咽喉科などでポリソムノグラフィー(PSG)等の検査を行いマウスピース治療が適応と診断された患者さんが対象で、保険適用となるためには紹介状が必要です。

6.補綴前処置

下あごの内側や上あごの中央などに骨隆起ができたり、ほほなどの小帯により義歯に痛みが出たり安定が悪い場合は、義歯の安定をよくするために歯槽骨整形や骨隆起の除去、小帯切除などの補綴前処置を行います。

7. 薬剤関連顎骨壊死

骨粗しょう症の治療や予防で使われるビスフォスフォネート系の薬剤、がん治療で用いられるデノスマブをはじめとする分子標的薬は、合併症として抜歯や歯周病からの感染などを契機に顎骨壊死が生じることがあります。

有効な治療法は確立されておらず、多くは難治性です。そのため、これらの薬剤を使用予定、あるいは使用中の方は発症予防のために定期的な口腔管理が非常に重要となりますので是非ご相談ください。

8.周術期等口腔機能管理

心臓血管外科や整形外科での人工股関節置換等の手術、がん等に対する手術や化学療法、放射線療法を行う患者さまに対し口腔ケアを行うことで、肺炎や感染症、その他の合併症を防ぐことができることが最近の研究でわかってきました。

これらの治療を受けられる患者さまは、治療を行う医療機関と連携し、かかりつけ歯科として入院前、退院後、通院治療中の口腔管理を行いますので是非ご相談ください。